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活路は海外進出か 事業革新パートナーズ、茄子川仁社長に聞く、シュリンクする金型産業の生き残り策

日本金型工業会が2014年にまとめた「金型製造業の事業所の推移」によると、金型の事業所数は1991年の1万3115件をピークに、多少の増減を繰り返しながらも年々減少。2014年は7820事業所にまで落ち込んでいます。

 

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そんな金型業界に着目し、中小企業の海外進出サポートや経営コンサルティングを行っているのが、東京都中央区日本橋に会社を構える事業革新パートナーズ(BIPC)さんです。はたして、金型業界に活況を取り戻す方法はあるのでしょうか。meviy編集部の芝田と中島が、事業革新パートナーズ社長の茄子川仁さんにお話を伺いしました。

 

▼事業革新パートナーズはどんな会社?

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茄子川 仁(なすかわ じん)さん
1976年生まれ。総合商社、コンサルティング会社を経て2009年に事業革新パートナーズを設立し、代表取締役に就任。現在は業界企業の海外への市場進出の支援のほか、コンサルティング業務を手がける。

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芝田 本日はよろしくお願いいたします。まずは事業革新パートナーズさんがどのような会社なのかをお伺いできればと思います。

茄子川 弊社は食品や日用品などさまざまな業界・企業の海外展開をお手伝いしたり、経営のコンサルティングを行ったりしている会社です。2010年には日本金型工業会と業務提携し、金型メーカーの海外進出サポートにいっそう注力するようになりました。

芝田 そもそもですが、なぜ金型業界に目をつけたのでしょうか。

茄子川 金型業界は事業所数が減って冷え込んでいますが、世の中には金型を用いて作られた量産品が広く出回り、私たちの生活に密接に結びついています。ということは、その製品を作る金型の付加価値が高いのは間違いないだろう、と。金型業界がうまくいっていないのはどうしてなのか、という疑問から始まりました。

芝田 会社を作られた当時は、リーマンショック直後で業界全体が揺さぶられた時期ですよね。金型業界は顕著に影響を受けた部門だと思います。

茄子川 金型なんか絶対触らないほうがいいよって、業界の人々に猛反対されましたね(笑)。でも私は逆に、「あなたたちは自分たちの価値をわかっていない」と説き伏せました。ポテンシャルはあるのに、彼らが自分たちの価値をわかっていないのは非常にもったいないことです。だったら我々がお手伝いします、と。活動を続けるうちに周りからも賛同も得られ、次第に軌道に乗り始めました。

中島 内部の人間より外側から見たほうが、それまでになかった問題提起ができるような気がします。御社が大企業だけでなく中小企業を中心に活動されているのは、どのような狙いがあるのでしょうか。

茄子川 前職では大手の仕事ばかり担当していて、自分たちの手で環境を変えていく「手触り感」がなかったからですね。大きな会社をマネジメントしていくのではなく、小さな会社を大きくしたり風通しを良くしたりするなど、面倒くさがって誰もやらないことをやろうと決めました。

中島 周りが手をつけないということは、その分まだ余地が残されているわけですね。具体的にどのような取り組みをされているのでしょうか。

茄子川 日本金型工業会と連携して、金型JAPANブランドプロジェクト」を立ち上げ、海外市場調査や現地の企業とマッチングさせる商談会を開催しています。これまでタイやシンガポール、ドイツなど、各国を回りました。日本の金型は海外でも評価が高く、実際に仕事につながるような成果がありましたね。ドイツで行われた商談会で極寒の中着物を来て、パンフレットを配ったのはさすがに堪えましたが。

 

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芝田 そんなことをされていたんですか! 海外進出を考えていてもなかなかすぐに動けるわけではないので、事業者としてはそういった土壌はすごくありがたいですね。海外に広く認知してもらう意味でも非常に有意義だと思います。

茄子川 商談会の開催のほかには、インドで日本の金型の技術を伝えるための「寺子屋」事業を始めました。

中島 寺子屋事業?

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茄子川 インドで日系金型メーカーが工場を構える際、地元の人材を工場に招いて金型製作やメンテナンス方法をレクチャーする取り組みです。インドは金型を海外からの輸入でまかなっており、国内で生産する技術力が足りていません。金型づくりのノウハウを伝えれば、インド側は輸入に頼ることなく国内でも金型の製作が可能になります。日本側にとっては人材の確保にもつながるし、長い目で見れば日本の金型技術を海外に根付かせることもできます。

中島 なるほど、双方にとってもメリットが大きい取り組みですね。

 

▼金型業界は今後どのようになっていく?

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芝田 茄子川さんはこの先5年10年で、金型業界はどう変わっていくと見ていますか?

茄子川 業界として縮小していくことは、大きな流れとして必然だと考えています。ですが、生き残った一社一社は、経営規模も利益も上げられるような付加価値の高いメーカーになっていく可能性が十分に見込めると考えます。生き残れる会社をさらに“勝ち残れる”会社にする。そのためには、機械投資にも積極的に取り組まないと、業界スタンダードに追いつけません。敵対し合うのではなく、互いにレベルを引き上げるような会社になっていくようなイメージですね。

芝田 なるほど、会社側がきちんと付加価値の選別をするべきだ、と。ずばり、生き残る会社と消えていく会社の違いはどこにあるのでしょうか?

茄子川 1つの大きな傾向として、お客さんに金額決められている会社はだいたいアウトですね。金型って1点物の世界なので、そんな量産品のような価格の決め方をしていたら絶対に採算が合いません。ブランド品のような製造のあり方を考えるべきでしょう。金型の値段を自分たちで決めれるかどうかは、もっとも重要なポイントですね。

芝田 それは本当に難しい問題ですよね。会社側の立場もありますし……。金額を決められるかどうかの分水嶺って何だと思われますか?

茄子川 ひとえに交渉力でしょう。稼いでいる会社って、実は交渉をしっかりやりきっています。技術があるからそれ相応の値段で買うというのは、今はもう成り立っていません。技術力があるのは前提条件になっているからです。

 

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中島 新しい技術がどんどん生まれていく中で、少ないパイを奪い合うようなやり方は望ましくないですよね。

茄子川 そうなんですよ。周りの会社を見て「お客さんが自社以外に発注できる先はなさそうだな、もう少し金額を上げるか」という考えを持つべきでしょう。作るのならばここでしか作れないもの、専用工具を使って作り込んでいくべきです。特別仕様だから価値があるわけで、加工精度があるから売れるわけではなくなってきています。

芝田 いまの話に関連しますが、金型の事業所数も就業人口も少なくなっていく中で、これから高い技術力を持ったベテランがどんどん一線を退いていくわけじゃないですか。これから残る企業は、そういった現実に向き合ってきちんと対策を打てているのでしょうか?

茄子川 属人的な部分では、きちんと未来を見据えている会社は工程ごとに10年単位で人材を入れたりしていますね。たとえば磨きの仕上げ工程は、どうしても習得までに長い時間を必要としますので。

中島 人材確保は、どの事業者も悩みどころですね……。

茄子川 最近は金型の設計者がいないと騒がれていますが、それって工業高校とか技術的な目線でしか探せていなかったのが原因だと思うんです。設計に本当に興味ある人って誰なんだろうと考えると、美術系や芸術系の人たちだと気づいて、そこに声をかけて人を集めました。そうやって広くアンテナを張っていると、より多くのことに気づけるのではないでしょうか。

▼今後の課題

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芝田 茄子川さんの考える金型業界の今後の課題を教えてください。

茄子川 やはり後継者問題は大きいですね。今は60代以上の社長がほとんどで、引退した後に会社を任せる人間をどう確保するのか、重要なポイントになってくると思います。

芝田 経営者さんにとっては非常に難しい話ですよね……。

茄子川 後継者がいるかどうか、生き残っていそうかどうかなど、金型のユーザーがその部分をチェックし、発注を決める動きも出てきています。つまり、今だけ良ければいいという考え方ではなくなってきているんです。高齢の社長さんにとっては耳の痛い話ですが、他社と柔軟に経営統合をするなど、よりよい形を目指していくべきでしょう。

中島 後継者もそうですが、やはり若い世代の雇用は業界を活性化させる意味でも重要だと思います。若い人を業界に取り込むにはどうしたらいいのでしょうか。

茄子川 やはり金型業界って、どうしても地味なんですよね。働く人が自分たちの仕事がいかに素晴らしいのか、そこをしっかり認知して会社側が社員さんにしっかり伝える必要があると思います。

中島 以前にお話を伺った福井県の長田工業所さんは、自社工場をビジュアル的にもカッコよくして、若い人が働く場所に誇りを持てるような「ファクトリーアートメーション」という工場内改革プロジェクトを始められていました。工場側もそうした歩み寄りをしていく必要があると感じますね。

茄子川 若い人が一人入ると、次の人が安心して入りやすいので、連鎖反応的なものも期待できます。若いやつはダメだみたいな単純な思い込みではなく、会社側がじっくりと面倒を見てあげれば、近い未来の戦力になってくれるはずです。

 

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芝田 気負わずチャレンジできる土壌があれば、若い人もより挑戦しやすくなるのでしょうね。最後に茄子川さんが3D CADデータで手配する特注加工部品システム「meviy」に期待することがありましたら、お伺いしてもよろしいでしょうか。

茄子川 meviyの存在は業界に対するひとつの問題提起だと思います。デジタル化によって部品発注のサイクルが変わり、作業量が減るというのは画期的な取り組みです。その仕組みがあって初めて金型業界の人が自分たちの仕事をもっとどうにかできないか考えるきっかけになるでしょう。また、今後金型業界が生き残るために様々な付加価値をつけて強みを付けていかなきゃという時期がかならず来ると思います。meviyを提供するミスミさんは、金型部品メーカーなど多方面をつなげるハブとして、また切り込み隊長として、業界を引っ張っていってほしいですね。

 

▼まとめ

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今回のお話を聞いて、低迷している金型業界の状況を打破するには現状に甘んじるだけではなく、海外を見据えた広い視野とどうすれば生き残れるかという各企業のたゆまぬ努力が必要だと感じました。金型業界はいま転換の時期を迫られています。そうした動きをお手伝いできるよう、meviyは皆さまにとってよりよいソリューションを提供していきます。

 

▼meviy
https://meviy.misumi-ec.com/

取材協力:事業革新パートナーズ(BIPC)
https://bipc.co.jp/

 

文・撮影:神田 匠(ノオト)

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