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テーマは「つながる社会、共創する未来」 デジタル社会の新たな変革を予見した「CEATEC JAPAN 2017」レポート

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10月3日から6日までの3日間、幕張メッセにてIT技術とエレクトロニクスの国際展示会「CEATEC JAPAN 2017」が開催されました。

今回のCEATECのテーマは「つながる社会、共創する未来」。IoTなどによる超スマート社会の実現を通じて、快適で活力に満ちた生活ができる社会を目指す国家ビジョン「Society 5.0」を掲げ、その全体像や実現に向けての動きを観測できる現場でした。今回は「Society 5.0」を中心にレポートします。


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開場してまもない時間でも、場内はすでに多くの人でにぎわっていました。業界関係者と思われるスーツ姿の人々の割合が高かった印象も。人混みをすり抜けながら会場を探索します。

 

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こちらはマクニカが提供するIOTセンサーソリューションサービス「Mpression」の展示。工場内の機械にセンサーを設置し、稼働状況をインターネットで管理することによって、よりFA(Factory Automation)などの状況を把握できるシステムです。

 

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センサーで感知した情報をオンライン上で管理。センサーデバイスには揺れや気圧を感知する重力センサー、温度、湿度や照度を感知する環境センサーが組み込まれており、それぞれの機械の稼働状況をひと目で把握できます。大きな工場だとどうしても目の行き届かないところもあるため、これは重宝されそうです。

 

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マクニカの川崎健介さんは「今までは人の手で確認をしていたものが、このシステムを導入することで、各機械の環境や稼働状況が遠隔で把握できるようになります。メンテナンス時期もわかりやすくなりますし、蓄積したデータをクラウドで管理できるので、今後のオペレーションにも役立つでしょう」と説明してくれました。工場の機器をコンピュータネットワークでつなぎ、負荷状況などを視覚化するIoTソリューション。今後の稼働効率の向上が期待されます。

 

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こちらはS-cubismによるバーチャルコマースパッケージ「EC-Orange VR」。ブラウザ上に実店舗を再現することで、消費者に新たな購買体験を提供することを目的に作られたシステムです。

 

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実店舗を再現したバーチャル空間で店内を探索。店の雰囲気や商品の質感もとてもリアルで、まるで実際にお店を訪れているような感覚で操作できました。商品を拡大しすることで、生地感(手触りではなく、あくまで視覚的な情報ですが)などをチェックすることもできました。

 

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バーチャルの店内をぐるっと見渡し、気になった商品をタッチ。すると、その場で商品の情報やデザインのディテールを確認することができます。商品が気に入ればその場ですぐ購入可能。実店舗とオンラインの長所を融合したシームレスな購入体験を味わえました。

実店舗で買い忘れた商品を後で自宅からブラウザ上で注文したり、高齢者が自宅に居ながらにして行き慣れた店舗で買い物を楽しんだり。このシステムがさまざまなお店に導入されれば、商品購入の新たな選択肢が増えそうです。

 

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今回の展示会でもっとも驚かされたのがこちら、Origin WireressによるセンサーレスIoTソリューションシステムです。ブースには人だかりができるほど、来場者たちから大きな注目を浴びていました。

 

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担当者によれば、Wi-Fiの電波を同社の独自技術でセンサーとして利用し、屋内の環境をリアルタイムに検知。電波反射を計測することによって、屋内で人がどのような動きをしているかを判別しているとのことでした。動作のみならず、呼吸までも検知できるというのは驚きです。高齢者の転倒を想定した危機感知や家庭やオフィスの防犯など、さまざまなシーンでの貢献が期待されます。

 

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こちらはPROGRESS TECHNOLOGIESによる学習ツールロボット「TABO 8」の展示。小学館が発行する全年齢向け学習雑誌「小学8年生」特別号に、こちらのロボットが付録で付くのだそう。ブースでは「TABO 8」のデモンストレーションが行われていました。

 

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専用のアプリを使った「TABO 8」とのホッケーゲーム対決のデモンストレーション。タブレットの上をちょこちょこ動き回る様子がとても愛らしい。ゴールを決めるとくるっとターンするなど、コミカルな動きを見せてくれます。

同社事業部長の石澤祐介さんは「現在、子どもたちに向けたプログラム教育が注目されてはいるものの、従来のプログラミングでは子どもたちを引き込むような面白さに欠けます。そのため、現代のデジタル環境に即し、タブレットの画面と連動して画面上を動くロボットをプログラミングすることで、子どもたちにプログラミングの楽しさを伝えたいと考えて開発したんです」と説明してくれました。

 

動画はこちら。なぜ学習雑誌の付録にロボット? と思うかもしれませんが、2020年に小学校でのプログラミング教育が必修化されることを鑑みても、とても先進的な試みではないでしょうか。「TABO 8」が付録する「小学8年生」特別号は現在予約受付中だそうです。

 

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一見ただのぬいぐるみのように見えますが、こちらはレイトロン社さんの音声認識コミュニケーションロボット「Chapit(チャピット)」。話しかけるとかわいらしい声であいさつを返してくれるので、何度も話しかけたくなってしまいます。関西弁で話しかけると関西弁で返してくれたりするなど、ユニークな機能も搭載されていました。

また、チャピットがクイズを出題する「クイズモード」などレクリエーション機能も搭載し、幅広いコミュニケーションを楽しむことができます。担当者によると、お子さんがいる家庭や一人暮らしの高齢者に向けての活用を想定しているとのことでした。

 

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バンダイナムコブースではアニメ『機動戦士ガンダム』ファンにはおなじみのマスコットロボ「ハロ」の出展も。正式名称は「ガンシェルジュ ハロ」。ガンダムの知識を豊富に持つ対話型AIコミュニケーションロボットです。

 

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こちらはハロとの会話の実演コーナー。ハロが来場者に「ガンダムのパイロットはダレ?」とクイズを出題し、これに正解した来場者は会場から拍手を浴びていました。ハロと作品のうんちくを語り合いたい人、原作のファンの人は要チェック。専用のアプリをダウンロードすることで、オーディオ用スピーカーや目覚ましなどの機能も使用できます。

 

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モノとインターネットがつながるIoTや、リアルとサイバーを融合させるCPS(サイバーフィジカルシステム)を中心とした展示が多く見られた「CEATEC JAPAN 2017」。私たちを取り巻くデジタル環境の現在の動向や、これからの変革を予見するイベントでもありました。次回の開催は来年10月16日〜19日の3日間。どのような展示が見られるのか、今から楽しみです!

 

取材・執筆:神田 匠(ノオト)