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ユニークな展示がたくさん! Makerムーブメントの祭典「Maker Faire Tokyo 2017」レポート

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東京ビッグサイトで8月5日・6日の2日間、「Maker Faire Tokyo 2017」が開催されました。

 

Maker Faireは、地上最大といわれるDIY(Do It Yourself)の展示発表会です。参加者は「Maker」と呼ばれ、技術愛好家やクラフト作家、教育者、エンジニア、サイエンスクラブのメンバー、作家、アーティスト、学生など、さまざまな職種や世代が大集合。新しいテクノロジーを使ってユニークなものを作り出すMakerたちの展示やデモンストレーションによって、会場は大賑わいとなりました。


そんな「Maker Faire Tokyo 2017」にmeviyスタッフが潜入。場内で気になった展示をいくつかご紹介していきましょう。

 

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会場は通路をすれ違うのに一苦労するほどの人だかりです。各ブースでは来場者が出展者に質問をしたり情報交換をしたりと、想像以上に活発なコミュニケーションが行われていました。上の写真中央の展示はなんと、すべてストローで作られたタワーです。ストローとジョイントだけでここまでのタワーができるとは驚きです。

 

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こちらは、はんだ付け体験や、バルーンアートづくりなど、子供向けの製作体験ブース。夏休みの宿題を兼ねてでしょうか、親子で真剣に取り組む姿も多く見られました。

 

……と、この調子で回っていると、全450組の出展は全部回りきれません。会場をうろつきながら、その中で特に気になった展示をご紹介していきます!

 

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こちらはKDDI総合研究所ミライヲツクルプロジェクトの「充電ロボ」。テーブルの上に置かれたスマートフォンを自動で見つけて充電してくれるロボットです。画像処理やシステム制御を工夫することにより安価な部品のみで高度な動作を実現したとのことですが……はたしてその動きとは?

 

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ロボットを実際に動かしてもらったところ、角度を微調整しつつ、充電端子を差し込むさまがなんとも愛らしい! 机の上などに放っておいたデバイスを勝手に充電してくれるロボットがあったらいいな、という素朴な願いが開発のきっかけだそうです。今後は製品化も視野に入れて研究を進めるとのことでした。

 

 

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こちらの展示は抽象的電子工作さんのコースター型IoTデバイス「Tabe/g(タベグラム)」。使い方は、ご飯を盛ったお茶碗をタベグラムに乗せるだけ。前回食べた量と比較して、LEDライト付きのコースターが赤(もっと食べた方が良い)・黄(今の感じで!)・青(食べすぎ!)の色に光り、食べる量を視覚で管理します。

 

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コースターの中には重量センサーが入っており、これで重さを感知。データは専用のアプリに転送され、自分が食べたご飯の量のデータをSNSでシェアする機能もあります。また、ごはん以外にもビールなどの飲み物にも対応。自分自身の食べ過ぎを防ぐパートナーになりそうですが、飲食店で提供するごはんや飲み物の量を均一にするツールとしても活用できそうです。

 

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たくさんの本が積まれていたオーム社のブース。オーム社は、理工学専門書やコンピューター関連書籍を数多くてがける出版で、ロボコン界隈ではロボット総合情報誌「ロボコンマガジン」を刊行していることで知られています。

 

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こちらのロボットは、近藤科学株式会社が開発している多様なロボットを組み立てられるキット「KXRシリーズ」の多足型ロボット。オーム社から「KXRかんたんガイドブック」 が刊行された記念に展示されていました。ブースではコントローラーを使って実際に操作をすることができ、子どもから女性までその動きを楽しんでいました。

 

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オーム社広告部部長の山崎力さんはロボコンマガジンについて、「小学生など、ロボットに馴染みの浅いお子さんにも読んでいただけるような雑誌を目指しています。自分たちの雑誌がきっかけで子どもたちにロボットに興味を持ってくれて、よりロボット業界が盛り上がってくれたらうれしいですね」と話してくれました。実際に小学生の読者から読者ハガキが届いたときは、涙が出るほど感激したそうです。

 

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機械が多く立ち並ぶ展示の中、ひときわ異彩を放っていたのがこちらのブース。VR×水槽をテーマにした本展示は、なんと魚が泳ぐ水槽を覗くVR(仮想現実)です。

 

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meviyスタッフも実際にVRを体験してみました。ヘッドセットを装着すれば、そこはもう水槽の中。目の前に金魚がいきなり現れてこちらに迫ってくるので、思わず反射的に体をのけぞらせてしまうほどで、想像以上にリアルな体験でした。

 

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モニターに表示されているのは、ヘッドセットから見えている水槽の風景です。自分がまるで水槽の中にいるような感覚に陥ります。本展示を制作した小倉豪放さんは「世の中にはいろんな魚を飼っている愛好家の方がたくさんいます。そういう人たちの水槽の中をVRで覗くことができたら、すごくおもしろいんじゃないかと思ったのが制作のきっかけです」と話してくれました。

 

この技術が発展していけば、家にいながらして水族館のような体験ができる日はそう遠くなさそうです。新しいアミューズメントパークを形作る技術のきっかけになるかもしれません。

 

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こちらはHERO Consultingによる「手書き風の手紙を代筆するRobot」。ブースではタイトル通り、座標を記憶したAI制御のロボットが目の前で手書き風の字を執筆します。デモンストレーションでは、あまりにテンポよくスラスラ書き進めているため、見物客たちはみんな驚きを隠せない様子でした。

 

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実際にロボットが書いた文章がこちら。まだ機械チックな書体ではありますが、どことなく柔らかい雰囲気を感じます。

 

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同社代表の佐藤博さんは、開発のきっかけについて「会社の同僚が暑中見舞いなどハガキを出すときに全部手書きで書いていてしんどいと言っていたので、ロボットが手書き風の字で書いてくれたら楽なんじゃないかと思いついたんですよ」と話してくれました。「ただ、ロボットが書いたような無駄がないきっちりした字だとかえって温かみがないと言われてしまうので、どう上手くするかよりもどう下手にするか苦労しましたが」と苦笑い。

 

上手より下手を目指すという逆説的なチャレンジは、なかなか面白い試みなのではないでしょうか。筆跡データをインプットすれば、理論上は他人の筆跡を完全に真似ることができるそうです。近い将来、この機械を使って筆跡鑑定をすり抜けるサスペンスドラマが作られたりして!?

 

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いきなりよくわからない箱をかぶっていますが、こちらはインターネットのおもしろ記事ポータルサイト、デイリーポータルZによる展示。一見何の変哲もないダンボールですが、かぶったまま正面を向くと……。

 

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なんと、顔がでっかく拡大されてしまいました。この箱はかぶった人の顔を大きくしてしまう「デカ顔箱」。これはインパクト抜群です。大人も子どもも顔を大きくして記念撮影をして楽しんでいました。

 

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同ブースには「お札を吹き出すATMマン」の展示も。取り出し口から勢いよくお札が飛び出しています。中に人が入って動くことも可能だとか。見ていた子どもたちも驚いていました。みんながみんな役に立つものを作ろうとするのではなく、こうして役に立つかはわからないけど人を笑顔にさせるようなものが心を揺さぶることもあるのではないでしょうか。そんなことを感じさせてくれる展示でした。

 

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ものづくりに携わる人々が集い、ユニークな展示が多数見られた本イベント。機械にまったく詳しくない人でも気軽に楽しむことができ、また今後のものづくりの新たな可能性に思いを馳せることができました。

「Maker Faire」は最先端の技術とユニークな発想で作られた展示が立ち並ぶ見本市。今後もチェックすることで最新の技術動向やその進化を目の当たりにできそうです!

 

取材・文:神田 匠(ノオト)