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リニアガイドを選定してみよう|ダイセキのメカ設計道場【第3回】

こんにちは!株式会社ダイセキ本社の孝治正和(技術士)です。

今回から、またピックアンドプレースユニットの設計に戻り、各機械要素の設計をしていきたいと思います。今回はリニアガイドの選定をしていきたいと思います。

 

直線案内要素のいろいろ

直線案内要素にはいろいろなものがあります。いくつか挙げてみると、

形式 名称 外観 特徴
転がり リニアレール 安価。
レールがプレス加工品のものが多く、走り精度は期待できない。
精度を必要としない、軽荷重の箇所に使用することが多い。
リニアブッシュ リニアレールとリニアガイドの中間の価格帯。
リニアシャフトと組み合わせて使用する。
軽荷重で走り精度が必要な個所に使用する。
リニアガイド FA装置で一番使用される。
走り精度が高く、許容荷重も高い。
必要な荷重に合わせて型式を選択し、高い走り精度が必要な個所に使用する。
すべり アリ溝 すべりガイドなので、摩擦抵抗は大きい。
工作機械などにも使用されるガイド形式であり、調整次第で高い走り精度が得られる。
製作工数が多いため、高価である。
スライドメタル リニアブッシュと同様に、リニアシャフトと組み合わせて使用する。
リニアブッシュより摩擦抵抗は大きいが、大きな荷重を受けることができる。
油空圧シリンダで駆動する装置のガイドなどに使用する。

 

以上のようなものがあります。

どのガイドを使用するかについては装置の設計条件に依存してきます。今回重要なポイントは、

  1. ハンドの位置決め精度(ハンドの位置決め精度が悪いとチャックミスやワークにキズを付けたりすることになる)
  2. ハンドのオーバーハング荷重(ガイドの耐荷重と変位に注意する)
  3. 使用速度

があります。

②も①に関係してくる部分ですので、同時に考えていく必要があります。この装置では③の使用速度から、すべりやリニアレールは除外し、リニアブッシュかリニアガイドの二択となります。そして、Y軸が前進したときのオーバーハングや、加減速時に発生するモーメント荷重を考慮して、リニアガイドを選定します。

リニアガイドの構造

直線案内としてよく使用されるリニアガイドの構造について見ていきたいと思います。

 

1.リニアガイドの構造

リニアガイドは直線案内として利用されることが多く、低摩擦でガタが少ないのが特徴です。また、レールを継ぎ足すことで、無限に延長することが出来、色々な設備で利用されています。

リニアガイドの構造

リニアガイドの構造は上図のようになっています。レールとブロックは無限循環するボールで接触しており、メーカーや型式によって2条や4条で接触するようになっています。また、より、重荷重・高精度用途として、ボールの代わりにローラーが使われているものもあります。

 

レールは一定のピッチで取り付け穴があいており、取り付け面にしっかり固定することが出来ます。これにより、走り精度(直進性)はレール単体の剛性ではなく、取り付け面(部品)と組み合わせた剛性とすることが出来るので、高い走り精度を出すことが出来ます。

 

2.リニアガイドとリニアブッシュの違い

リニアガイドと同様にボールが無限循環する直線案内としてリニアブッシュがあります。リニアブッシュは専用のレールを必要とせず、研磨シャフトとシャフトホルダーがあれば、案内が構成できます。では、どこが違うのでしょうか?

リニアブッシュとリニアガイドの取り付け状態

上左図にリニアブッシュの取り付け状態を示します。リニアブッシュを使用する場合、ガイドとなる研磨シャフトの両端をシャフトホルダーで保持します。負荷荷重はリニアブッシュを介して研磨シャフト単独で受けることになります。図のように研磨シャフトは両端だけをシャフトホルダーで支持されているので、荷重により軸たわみが生じることになります。

 

対して、リニアガイドは上右図のようにレールを取り付け座面に一定のピッチで固定します。これにより、ガイドと座面が一体となりレールのたわみが抑えられ、高い走り精度が得られることになります。逆に考えると、座面に強度が無ければ、リニアガイドの走り精度は出せず、「宝の持ち腐れ」となりますので、注意してください。

 

次に、ボールとレール(シャフト)の接触を比較すると、リニアガイドはレールにボールの転がる転動面がありますが、リニアガイドは丸シャフトを使用する為、ありません。

この為、接触面積が狭くなり、同じ荷重を受けてもレール(シャフト)への負担は大きくなります。

リニアガイドとリニアブッシュの負荷分布

 

リニアガイドの選定

それでは、リニアガイドの選定をしていきたいと思います。今、設計中のユニットではX軸とY軸の2軸があり、構造として、X軸の上にY軸が載っている形になっていますので、まずはY軸から選定をしていきます。

 

1.構造をモデル化する

第1回に出てきた図ですが、今はリニアガイドの選定をしたいので、必要最小限にモデル化をします。

 

2.Y1、Y2に掛かる荷重を考えていきます。

 

3.次に、先端部の集中荷重について考えます。

Y1に掛かる荷重はY2を支点としたレバーと考え、

Y2に掛かる荷重はY1を支点としたレバーと考え、

 

4.各リニアガイドブロックのラジアル荷重は 3.の和になります。

 

5.次に、平面的に見て加減速時の荷重を考えます。

最大加速度をα1=1250mm/s2とします。(0 → 250mm/s を0.2secで加速する)

この時のY1、Y2に掛かるヨー荷重(MB)を見ていきます。

Y1には先端の集中荷重(W)とビームの荷重によるモーメント

が掛かる。

同様に、Y2には

これらの条件を満足するガイドを選定していきます。

 

6.ガイドの選択

1~5で求めた結果で考えると、ミニチュアタイプでも機能は果たしますが、ガイドの剛性やコストパフォーマンス(ミニチュアタイプと中荷重タイプで価格にさほど差が無い)を考え、ここでは、中荷重タイプを選択します。同じ製品を大量生産する場合には、少しのコストの差が効いてきますので、ミニチュアタイプの選択を検討します。

ここでは、SVR-MX24を使用するものとします。

SVR-MX24

 

7.X軸も同様に考えて確定していきます。

X軸に関しては、Y軸(チャック)がどの位置にある時に一番負荷が大きいかをまず考えます。この装置では、最もモーター側に来た時の位置(最初の図にある位置)に一番負荷が厳しい条件(ヨー荷重が大きい)になります。

 

X軸の断面を見てみると、下図のようになります。

モーター側の方に長く伸びているように思いますが、Y軸が反対側に伸びている、Y軸モーターが軽い状況ですので、この場合にはモーメント荷重は考慮せずにすすめてよいと思います。装置の完成状態では、配線や配管、電磁弁などが付属してきます。ここで、厳密に計算をしても意味はありません。

 

X軸のリニアガイドについてはラジアル荷重のみを見ておきます。

リニアガイドに掛かる質量の合計は、

品番 品名 質量(kg) 数量 小計
1 Y軸モーター(200W) 0.8 1 0.8
2 リニアガイドレール(580L) 0.9 2 1.7
3 Y軸ベース(A5052) 2.5 1 2.5
4 リニアガイド高さ調整ブロック 0.5 2 1.0
5 Y軸ビーム 2.1 1 2.1
6 チャック部 1.0 1 1.0
合計 9.1

 

これに、先程述べたように配線や配管等が付属してきますので、その増分として、2kg程度加算して考えます。従って、X軸リニアガイド1個に掛かる荷重は、

となります。

ここでの計算は静荷重(C0)を考えていますので、基本定格荷重の右の列を見て考えれば良いのですが、Y軸とのバランスを考えて、X軸のリニアガイドは、SVR-MX28を使用するものとします。

寿命計算

型式を決定したら、寿命計算を行います。

寿命計算は次の式で計算できます。

L : 定格寿命(km)

C : 基本動定格荷重(N)

ft.: 温度係数

P : 作用荷重(N)

fw: 荷重係数

温度係数

 

荷重係数

使用条件 fw
外部からの衝撃振動もなく速度も遅い場合 15m/min以下 1.0~1.5
特に著しい衝撃振動もなく速度も中速の場合 60m/min以 1.5~2.0
外部から衝撃振動があり速度は高速の場合 60m/minを超えるもの 2.0~3.5

 

Y1について計算してみたいと思います。

SVR-MX24の基本動定格荷重(X軸選定の箇所の表参照)は、

C=5.0kN

使用温度は常温なので、

ft.=1.0

荷重係数は、使用する速度が250mm/s(=15m/min)で外部からの衝撃もないので、

fw=1.2

とします。

 

以上から、定格寿命は

となります。

寿命計算に使用するのは動定格荷重(C)ですので、注意してください。

 

寿命時間は軸の走行距離とタクトタイムが決まっていますので、定格寿命を1サイクル当たりの走行時間で割ると、出てきます。

 

近年では、設備の導入から運用そして廃棄までの期間を設備導入前に決定してから、設備の発注というケースも増えてきています。定期交換部品となりやすいリニアガイドの寿命をどう設定するかということは、ランニングコストに関わってくることなので、注意して検討をしたいものです。

 

次回はピンクアンドプレースユニットの重要部品である、ボールネジの選定をしたいと思います。それではまた。

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